「菊と刀」

濃厚接触者として,「さくらクリニック」でPCR検査を受けた外国籍の方々の礼儀正しさには,心底,感心致しました。彼(彼女)らは,陽性反応が出た場合には,保健所の指導に従い,そして日本社会の法律に従い,行動しています。そして,ある中国籍の若い女性は,既に接触した多数の人に電話で連絡を取り,謝罪し,PCR検査を受けるように勧めています。

それに反し,保健所から,濃厚接触者と見なされ,「さくらクリニック」受診を勧められ,「さくらクリニック」と連絡をとり,受診の時刻を決めた日本人の一部は,約束の時刻になっても一向に来院しない。また電話連絡を取ろうとしても,電話に応じない。後々,保健所にそのことを連絡すると,保健所の職員も驚き,その後の対応に追われる事態が目立つ様になっています。

また、多くの企業や学校(特にクラブ活動)で、「PCR検査を受ける際には、上司や教員(クラブの顧問)に許可を取ることが、義務付けられています。」何度も経験があるのですが、私がPCRを勧めると、「一度、上司(or クラブの顧問の先生)に携帯で確認します。」と言って、部屋の隅で、しばらく、携帯で連絡を取っていますが、その後、私の前に来て、「PCRの検査は受けるなと言われた」などの場面に遭遇します。その際、再度PCR検査を勧め,中には,自分の意志でPCR検査を受ける方もいらっしゃいますが,は半数以上が,PCRを受けずに終わってしまします。

近頃は,「立ち食いそば屋」みたいなPCR検査場に赴き,陽性反応が出ても,保健所にも届けず,そのまま隠蔽し,周囲に新型コロナウイルスを,平気でまき散らしています。また,唾液と称し,実は水道水を入れて,PCR検査検体として郵送し,「新型コロナウイルス陰性証明」を手に入れる。この様なことが,今の日本の中で,大手を振って,まかり通っています。(文末の[Ⅳ]の赤字で書かれた文章をご参照ください。将来的に困った事態に遭遇します。また,陽性であることが判明し,その後,急変時が生じた場合にも,真にコロナウイルス感染症か否かが問題となり,治療が遅れることになります。)

ふと,次の様なことが,私の脳裏をかすめました。ルース・ベネディクトという,米国の女性人類学者の著作であるの中で,日本人の文化は「恥の文化」であり、欧米人の文化である「罪の文化」とは異なると述べています。これに基づいて考えると,日本人にとり,新型コロナ感染症に感染することは,「恥である」と考える人が多い様です。従って,感染したという事実を周囲に知られたくないと思うのでしょう。ところが,欧米人を含め,諸外国の人々は,ベネディクトによると,「他人の目」ではなく,「神様との対話」の中で自分の行動を決めていると言うのです。そのため,自分が新型コロナ感染症に感染したことを周囲に公表し,周囲に感染が広がらないように努力している様にも思われます。

昨今の,企業等が主体となるPCR検査には,確かに,利点があることは事実です。しかし,それらの企業等は,意識的にせよ,無意識的にせよ,日本人特有の「恥の文化」を利用して,成功をおさめていると思われます。その結果,それらの企業等は,社会的名声,そして社会的評価を獲得している様に思われます。

新型コロナウイルスは, positive sense (+) single-stranded RNA virus に分類されます。

すなわち,その遺伝子がRNAであるため,またsingle-stranded (1本鎖)であるため,遺伝子の複製が生ずる際に,誤った複製が高頻度で生じます。そのため,感染力,悪性度が高い新型コロナウイルス(CAVID-19)が容易に出現することになります。

現在,ワクチンに対する期待が高まってします。しかし,WHOは,「ワクチンだけではコロナ消滅せず」と警鐘をならしています。また日本製ワクチンの製造を手がけている塩野義製薬の手代木功社長は,「ワクチンだけで収束は無理・・・・ワクチンは万能ではありませんし、免疫はそんなに簡単ではないのです」と申し述べています。

確かに,これから出現する様々なワクチンにより,一時マスコミで有名となった医学統計学の用語である「基本再生産数:R0」を,一過性に,1以下(<1)に下げることは可能かもしれません。しかし,これが永続するのは,はしか(麻疹:Measles)の様に,「一度罹患したら,殆ど2度目の罹患はない」様な場合です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に2度罹患したなどと言う話は,珍しくありません。実際,私の知人の医師も,2度罹患しています。従って,「基本再生産数:R0」が一過性に1以下(<1)に達しても,感染者が残っていれば,その感染者から,再度周囲に感染が広がることになります。

イギリスのボリス・ジョンソン首相は,議会で「集団免疫」という発言をした直後に,新型コロナウイルス(CAVID-19)に感染しました。その後,彼の口から,「集団免疫」という言葉を聞くことはありません。スエーデンは,「集団免疫」の理論で進もうとしているようですが,もはや破綻状態です。「集団免疫」の理論が通用するのは,はしか(麻疹:Measles)の様に,「一度罹患したら,殆ど2度目の罹患はない」様な場合です。

とんでもなく効果がある治療薬が,ある日,出現し,コロナ問題を快刀乱麻の如く解決してほしいものだと思います。しかし,その日が来るまでは,今年の用語対象のNo.1である,小池百合子都知事の造語である「三密を避ける」を守りながら,「基本再生産数:R0」が一過性に1以下(<1)を目指し,その状態を,人為的に長続きさせる以外に方法はありません。また,目下,非難の矛先になっている菅首相の唱えるように,「経済活動も維持させる」ことも,勿論必要であり,むやみに非難ばかり続けることも避けなくてはなりません。医療が,何とか持ちこたえているのは,経済的基盤が存在するからに他なりません。

「菊と刀」の中で指摘されている,「恥の文化」は確かに,多くの日本人の心に宿っており,新型コロナウイルス(CAVID-19)に感染したことを隠蔽しようとする気持ちは,同じ日本人として,分からないではありません。しかし,この大参事の中では,意識的に「恥の文化」を捨てなくてはなりません。新型コロナウイルス(CAVID-19)のPCR検査を,第一線で担当している医師として,皆様方に御願いする事は,次の3つです。