インフルエンザ・ワクチンについて

¶ インフルエンザは,通常12~1月から流行が始まり,4~5月には終息する。

¶ インフルエンザワクチンの効果は,接種後2週間から5か月と言われており,たとえワクチン株が前年と同様のものであっても,毎年の接種が必要である。

¶ 日本のインフルエンザワクチンの接種方法(「予防接種の手引き」より引用)

上記は,全て「予防接種の手引き 2020-2021年度版」より引用。

¶ ところで,米国の基準を見てみましょう。下記は,「Red Book」より引用

9歳,ないしはそれ以上の年齢の小児は,過去にインフルエンザワクチンの接種の有無を問わず,1年間に1回のみの予防接種で十分である。

上記の表の [d] の意味 ⇒ 過去にインフルエンザ・ワクチンの接種を受けていない6か月から8歳までの小児に関しては,良好な抗体産生を誘発するためには,4週間の間隔をあけて,2回の接種を受けることが望ましい

それでは,過去に,1回以上インフルエンザワクチンの接種を受けた,1歳半~8歳までの小児の場合はどうするのかと言うことに関しては,「Red Book」には,記載がない。

本来だと,1歳半~8歳までの小児も,日本の接種基準に準じて,4週間以上の間隔をあけて,2回の接種を行うことが望ましい(****)。

人間の脳・精神機能の発達に関しては時間がかかります。子供が成長するにつれて,次第に,世の中の物事や人情について、おぼろげながら理解し,判断できる様になります。すなわち「物心」が付くのには時間を要します。

それと同様に免疫機構の発達も,ゆっくりと進行します。免疫機構の発達過程に関しては,未だ不明な点が多く,確実なことは解明されていません。しかし,免疫機構の発達に関する研究論文も出てきております。また私の病理医(私の本当の専門分野)としての経験,および友人の小児科医の意見を聞くと,確定的な根拠があるとは言い難いのですが,次の様に類推されます。すなわち,免疫機構の発達が,不完全ながら,ある程度進行した時期にさしかかったとされる1つの目安は,「物心が付いた状態」に至ることの様に思われます。

従って,もしも上記の考えが正しいとするならば,免疫機構が未成熟な段階では,上記の日本流(****)の2回接種が望ましい。

例年なら,「インフルエンザの予防接種を受けなさい」という私の忠告に耳を貸さない高齢者が,今年に限って,しばらく前から「インフルエンザワクチンを受けたい」と言い始めている。この様な事態ですが,大まかな試算をすると,1歳半~8歳までの小児の全てとはいかなくとも,大方,2回接種が可能なように尽力します。

「予防接種の手引き」の一部の記載を紹介します。

一方で,小児においては,その効果が低いことが知られており,特に2歳未満の児における効果が,年長児と比べると低いことが知られている。米国のデーターによると,インフルエンザと検査で確認された患者に於いて,ワクチンの効果は10~60%と幅広く,その流行年により大きく異なる。しかしい,入院は約60%,ICUへの入院は80%,また死亡率は,ハイリスク児で51%,非ハイリスク児で65%減少したと報告されており,この年齢層でも,その効果が示されている。

この文章は,一般の方々には,少々難解かもしれません。しかし,この様な事実を踏まえると,特に,2歳未満の児には,やはり,可能な限り,2回接種できる様に努力しなくてはなりません。

雑談になりますが,「Red Book」と言う,英語で書かれた,そして世界中の医師に広く読まれている,極めて有名な医学書があります。米国小児科学会が定期的に改訂している,予防接種の手引きです。その表紙は,真っ赤で,red bookそのもの。上述の「予防接種の手引き」も,表紙は真っ赤で,米国の「Red Book」を模しているのかもしれないが,真相は不明。

「Red Book」は米国の,そして「予防接種の手引き」は日本の,予防接種に関するバイブルとも言われる書物です。日本の多くの予防接種の専門家は,必要に応じて,これらの本を読みあさり,予防接種の専門家として成長していったと言われています。