ウイルスの分類は多数知られていますが,最も頻繁に使用されている分類を用いると,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,International Committee on Taxonomy of Viruses (国際ウイルス分類委員会)による分類では,1本鎖RNAウイルス[+]に分類されます。
1本鎖RNAウイルス[+]
◎ウイルスの主体をなるmRNAが、直接ウイルス蛋白質を作り出す。ウイルス自体が細胞質内で自らが持つRNA依存性RNAポリメラーゼで複製する。
◆ コロナウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルス
************
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,RNAが主体ですが,それだけでは,死滅してしまいます。従って,RNAを保護してくれる殻(貝を守るための貝殻の様な物です。実は,タンパク質で作られています)が必要です。その殻の内部におさまっていれば,安全で,生き延びることができます。
ところで,ウイルスが人間の細胞に感染すると,どうなるのでしょうか。人間の細胞の内部に入ると,殻からRNAが,人細胞の細胞質内部に出てきます。そこは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が住みやすい環境だからです。
DNAやRNAは,4種類の塩基から構成されています。
DNAは4種類の塩基,Adenine (A), Guanin (G), Cytosin (C), Thymin (T)から構成されています。
RNAは4種類の塩基,Adenine (A), Guanin (G), Cytosin (C), Uracil (U)から構成されています。
****************
本当は,相当に複雑な説明が必要なのですが,簡単な例を用いて説明しましょう。
例えば,人間の遺伝子は,DNAですから,A, G, C, Tなる4種類の塩基から構成された鎖の様な物です。
その中で,AはTと(A=T),GはCと(G=C)仲が良く,相互に結合します。ですから,細胞分裂するときには(人間のDNAは2本が相互に絡まって出来ていますが,細胞分裂の時には,2本が分かれて,1本鎖となります。),
A-G-C-T-T-G-A-C-T-A なる染色体の塩基配列を鋳型と仮定すると,
T-C-G-A-A-C-T-G-A-T なる新しい塩基配列を有したDNAが形成されます。
これが,人間の遺伝様式です。
ところで,この様に,1本のDNAを鋳型として,相補的なDNAを形成する際には,酵素が必要とされます(DNA dependant DNA polymelaseと言う酵素)。
****************
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はRNAウイルスです。それが増殖するためには,1本のRNAが,相補的なRNAを形成しなくてはなりません。ところが残念な事に,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は相補的なRNAを構成するためには,人間と同様,酵素が必要とされます(RNA dependant RNA polymelaseと言う酵素)。
そうすると,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は増殖できないことになります。すなわち,こんなに,世界中が大騒ぎすることなど,理論上はありえないはずです。
ところが,これが出来てしまうのですから,自然の摂理は驚くべきことなのです。
1本鎖RNAウイルス[プラス鎖]の[プラス鎖]の意味は,本来は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が有していないはずの,RNA dependant RNA polymelaseを,何とも驚くべき,巧妙な手段で,獲得してしまうことを意味しています。
そして,それが増殖するためには,ですから,人間の細胞内で増殖するためには,相補的なRNAを