人の子宮頚癌の原因となるのは,多くの場合,human papilloma virus (HPV)(ヒト パピローマ ウイルス)です。多数のhuman papilloma virus (HPV)が知られていますが,それらは,番号で区別されています。例えば,HPV16とか,HPV18の様に命名されています。
子宮頚癌ワクチンには次の3種類が,日本国内で,接種可能です。
①サーバリックス(HPV16, 18 の感染を防御する)
②ガーダシル(HPV6, 11, 16, 18 の感染を防御する)
③シルガード9(HPV6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58 の感染を防御する)
ここで,これから子宮頚癌ワクチン接種を計画している若い女性の方に留意して頂きたいことを申し上げます。
既に特定のhuman papilloma virus (HPV)に感染した方は,ワクチンを接種しましても,感染を除去することは,困難です。
例えば,既に性交渉の結果,HPV18に感染してしまった状態の女性は,上記の①②③のワクチンの何れの接種を受けても,HPV18を除去することは不可能です。HPV18に感染した女性は,全例ではありませんが,10-15年前後の時間をかけて,子宮頚癌を形成する方向に向かいます。ただ,この女性がHPV18には感染しているが,HPV16に感染していない状態である場合は,ワクチンは,HPV16が,子宮頸部の細胞内に侵入することをブロックできます。HPV16による発癌は,おそらく生じにくい。
従って,なるべく早い段階で,出来れば中学生くらいの段階で子宮頚癌ワクチンを受けることが強く望まれます。
感染してしまったウイルスを,子宮頚癌ワクチンが,感染細胞から駆逐する力はありません。ワクチンは,あくまで,性行為の際に,子宮頚部に到達したウイルスが,子宮頸部の細胞内部に侵入するのをブロックするのみです。過去において,子宮頸部の細胞内部に侵入したウイルスを,細胞内から除去する力は持ち合わせていません。
くり返しになりますが,なるべく早い段階で,出来れば中学生くらいの段階で子宮頚癌ワクチンを受けることが強く望まれます。
子宮頚癌は,全て,性交渉時のHPVへの感染に起因すると考えられてきましたが,これは最近否定されています。一部の子宮頚癌は,HPV感染や,性交渉の有無に関係なく発癌しています。ただ,その頻度は,低いと思われます。
また,性交渉の経験のない女性の一部は,膣内部にHPVを内在しているとも言われていますが,おそらく,それらのHPVウイルスは,おそらく発癌に関与しないとされています。
男性も,HPVウイルスで,陰茎癌を生じますが,その頻度は,女性に比し,有意に低い。頻繁に,陰茎等の皮膚が洗浄されていることに起因するのであろうと推察されています。
HPV6,11に感染した女性から出生した子供の一部は,頻度は低いのですが,呼吸器乳頭症を生じ,次第に呼吸が出来なくなり,窒息死します。目を覆いたくなる様な,極めて悲惨な出来事ですので,なるべく早い段階で,出来れば中学生くらいの段階で子宮頚癌ワクチンを受けることが強く望まれます。
本来は,中学生くらいの段階で,9価のシルガード9の接種が望ましいのですが,現時点では極めて高価です。先ずは,公費で(無料で:下記参照)接種を受けられるワクチンを,出来れば中学生くらいの段階で受けましょう。将来,自分の稼ぎが生じた段階で,シルガード9を受けることも可能です(但し,その段階で,感染が生じていると,シルガード9の全ての成分が,感染をブロックしてくれないかもしれません)。
子宮頚癌健診は,ワクチン接種の有無に係わらず,一生の間,定期的に受けましょう。子宮頚癌の進行は,急激に進行する様な例もありますが,多くの場合は,緩慢としています。現在では,様々な治療方法が確立されていますので,多くの場合,対処が可能です。