糖尿病

糖尿病診療はさくらクリニックが専門とする分野の1つです。院長の私は,羽村市にある,日本屈指の臨床検査会社である(株)エスアールエル細胞病理研究所の所長(診断業務の最終責任者)を20余年にわたり務め,病理診断・細胞診断・遺伝子病理診断に従事しておりました。

ふとしたことから,その細胞病理研究所から,わずか2kmの近距離にある,「西多摩病院」の外来診療および入院患者の治療に深く関与することになりました。西多摩病院では,特に,糖尿病の薬物治療・インスリン治療等に明け暮れました。その際には,私の母校である名古屋市立大学医学部の優秀な同級生の糖尿病の専門家に,また東京都立国立高校時代の同級生で,青梅市内で開業している,これまた優秀な内科医師(千葉大学医学部卒業 ⇒ 青梅市立総合病院勤務 ⇒ 開業)に,20余年にわたり、糖尿病に関して,懇切丁寧に,指導を賜りました。その時の豊富な経験を元に,さくらクリニックでは,糖尿病の診療に力を入れています。

優秀な医師が私の親友であると言う幸運に,今,改めて感謝致しております。

上の写真の機械は,糖尿病診療に不可欠なHbA1Cの測定機です。指先の皮膚を,血糖測定用の細い針で穿刺し,わずか一滴の血液を採取するだけで,僅か6~7分間でHbA1Cの値が,その場で判明します。

受診日のHbA1C の値に基づいて,その陽に処方する糖尿病薬の種類や処方量,またインスリンの投与量を決めることになります。

HbA1cの測定を,臨床検査会社に提出し,1~2か月後に患者さんが来院したときに,1~2ケ月前のHbA1c値を参考に,処方やインスリン投与量を決めるなどが,しばしば行われているのを見かけます。ちょっと考えて見れば容易に分かることですが,適切な糖尿病治療とはおよそ言い難いことは明白です。

糖尿病の病態は,時々刻々変化していますから,受診日のHbA1Cを根拠に,処方内容およびインスリンの投与量を決めなくてはなりません。

インターネット上を散策すると,「糖尿病の病態の推移を,HbA1Cの値で見るのは,間違っている」などの,過度に誇張した文章に出くわすことがあると思われます。インターネットは大変便利なのですが,十分な論拠を述べず,一面だけが強調されてしまうことがあり,困った事態が生ずることがあります。

HbA1Cの測定なくして,糖尿病の治療を行うことは不可能です。

ただし,HbA1Cも万能とは言い難く,欠点があるのも事実です。

血中のブドウ糖(glucose)は,ヘモグロビンβ鎖の末端で,シッフ反応生成物を形成します。しかし,これは不安定なため,アマリド転位反応を経て,安定型のHbA1cを形成します。

これらの反応は,酵素が関与しない反応であるため,HbA1cの血中濃度は,「過去1~2ヶ月間の平均の血糖コントロール状態」を反映することになります。

しかしながら,次の様な事態が生ずることがあります。

①高度の高血糖状態が存在しても,それに混じて,低血糖状態が混在すると,見せかけ上,HbA1cは,それ程高い値を示しません。

すなわち,「高度の高血糖状態」が,一定時間持続し,微小血管などに障害が生ずる時間があっても,HbA1cの値だけに固執して判断すると,「高度の高血糖状態」で経過する時間帯の存在に気付かないことになります。

②糖尿病薬やインスリンなどによる治療が始まると,実際には治療直後から血糖値は低下しているのですが,HbA1cの血中濃度は,「過去1~2ヶ月間の平均の血糖コントロール状態」を反映するため,HbA1cの値は,高止まりとなります。

従って,治療が開始されてから,HbA1cが低下するのには,数ヶ月がかかることになります

入院状態で,血糖値が頻繁にチェックされている場合と異なり,外来でのインスリン治療では,インスリン量は,徐々に増加させることになります。

③貧血が急激に改善し,新しい赤血球の産生が高まっているときには,HbA1cは低下致します。何故かというと,新しく産生された赤血球のヘモグロビンに,ブドウ糖(glucose)が結合し,HbA1cが産生されるのに時間を要するからです。

また,溶血性貧血と言って,赤血球(通常は,赤血球が産生されてから,破壊されるまでには,平均120日間を要する)が早く破壊されて貧血に陥るような病気では,HbA1cは低下致します。

④老齢者や,鉄欠乏性貧血の状態では,赤血球を大切に使いますから,赤血球寿命が延長することになります。この様な時には,HbA1cは高くなります。

⑤その他,様々な要因により,血糖の推移に比較し,HbA1cは高くなったり,低くなったりします。

⑥また,全身状態に大きな変化がないのにもかかわらず,急にHbA1cの値が上昇したと言うことになると,短期間に,相当のカロリーを摂取した可能性を考慮することになります。正月明けにHbA1cが上昇する人がおりますが,おそらく,こんなわけだろうと思われます。

¶ 様々な状況を考慮の上,HbA1cの値を考える場合には,糖尿病の治療の際に極めて重要な情報となります。