結核菌特異的インターフェロンγ産生能:9,000円(税別)
最近,上記の高額の検査を受けたいと申し出て,くらクリニックを受診する人が,時たま現れるようになった。多くは,看護師さん,ないしは看護学校の生徒さん達だ。医療機関や看護学校の指示によるものだ。
つい最近まで,日本は,文明国の中で,唯一の「結核症が蔓延している国」であるとして,諸外国の痛烈な非難を浴びていた。しかし,最近,多くの人の努力により,ようやくその汚名を返上することができる状態となった。大変喜ばしい事態だ。
上記の「結核菌特異的インターフェロンγ産生能」を調べる極めて鋭敏なテストが開発されてきたことも,結核患者の減少の一因と考えられる。
付記:検査の依頼先は,(株)ビーエムエルであり,信頼性は十分に高い。

呼吸器科や感染症科,また結核症に十分な経験のある医師達の間では,結核症に関する正確な知識を有していると思われる。その反面,多くの医師が,結核症を単に「結核菌に感染した感染症」であり,抗結核剤を用いれば,比較的短期間に治癒する病であるなどと考えている。
結核症は,最終的には,結核の専門家が治療にあたるのだから,それで良いのではないかなどの考え方も成り立つ様な気もするが,実際は困った事態だ。
私は,病理医として,900例近い死体解剖を行い,その中には,多数の結核症患者が含まれていた。また,いくつかの大学の医学部に勤務し,医学部の学生に,病理医としての立場から,結核症について講義を行い,教育を行ってきた。
昨今まで,文明国の中で,唯一の「結核症が蔓延している国」であった原因の1つに,多くの医師が結核症に対し,正しい知識を有していないことがあったとのではなかろうかと思われる。
それを,病理医の立場から,整理し、説明してみることにする。

¶ 結核症について
結核症と言うと,肺結核や腎結核,その他様々な臓器の結核症を思い浮かべる。
誤解されやすい重要なポイント
法制度上,結核症を発症した患者は,治療が終了し,症状が完全に消失し,そして,周囲への結核菌の感染がないと判断される状態に至っても,「結核が治癒しているとは見なされない」。勿論,法制度上のみでなく,医学的にも,治癒しているとは言い難い。
くり返しになるが,一度結核症を発症した患者さんは,「結核症が治癒した状態に戻ることはない。」
この様な患者さんは,保健所に,治療終了後も,潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection)として登録され,生涯にわたり,経過を追跡されることになる。
もちろん,この様な潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection)の状態の人は,そのまま,無事に結核症の発症なく,一生を終え,他界することが多いと思われる。
しかしながら,その一方,加齢と共に免疫力が低下したり,免疫抑制剤などの投与を受けた患者さんは,体内のどこかに(多くはリンパ節とされる)封じ込められていた結核菌が勢いを盛り返し,結核症を再度発病することになる。こ様な人は,ごく希とは,およそ言い難く,現在の「結核症封じ込め政策」に甚大な危機として存在する。
潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection)の免疫力が低下した状態になると,その患者さんは,再度,症状を発症し,感染性を有する結核患者の状態に移行する。そして,結核菌は他の人に感染し,その人は,結核症の症状を停止,明らかな結核症を発症することになる。
明らかに結核症を発症した人が,結核菌を排出し,その結核菌で結核症を発症すると一般に考えられている。しかし,実は,潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection)の患者が,免疫力の低下などで,結核菌を排出する様になり,これが,周囲の人々に結核菌をまき散らす事例も,相当数に及ぶと考えられている。
」
結核症は,新型コロナウイルス感染症と同じく,2類感染症である。
例えば肺結核症の患者は,一定期間,結核病棟に隔離され,治療を受け,その後退院し,一般の生活に戻る。新型コロナウイルス感染症と隔離期間は異なるが,本質的には同様な扱いを受ける。
ここからは,相当数の医師や看護師を初めとする医療従事者が誤解していることについて説明する。