髄膜炎菌感染症ワクチン(詳細)

 

髄膜炎菌感染症と言われても,一般の方はピンとこないかもしれません。

(日本脳炎とは異なった疾患であり,混同されないように御願いします。)

さくらクリニックに,1年に1回くらいの頻度ですが,髄膜炎菌感染症を防止するためのワクチンを接種してほしいとの依頼があり,接種を行っております。対象者は,「カナダに留学し,寮に入るため,髄膜炎菌ワクチンの接種を求められている方(カナダでは義務となっています)」,また流行地への渡航(アフリカ髄膜ベルトの国々等への渡航:後述参照)です。また,特殊な任務を有した国家公務員の方が,国の命令で接種を受けに来院したこともございます。

それらの方には,「メンクアドフィ」という髄膜炎菌ワクチンの筋肉内注射を行ってきております。

髄膜炎菌(Neisseria miningitidis)の感染により生ずる疾患を予防します。髄膜炎菌の周囲を覆っている膜(莢膜)の免疫学的特性により,A,B,C,W,X,Y 群に分けられています。髄膜炎菌は,鼻や咽頭等の気道粘膜に定着しますが,発症せずに,健常人として「無症候保菌者」となります。その割合は,人口の10~20%とも言われております。

ところが,一部の人は,髄膜炎菌に感染した後,潜伏期の3~7日をを経て,髄膜炎菌性髄膜炎,髄膜炎菌血症を発症することがあります。潜伏期が終了した直後,急激に高熱,意識混濁等で発症し,死に至ることも希ではありません。

第二次世界大戦直後は,毎年数千人の患者が報告されていましたが,2000年以降は,毎年10~20人程度で推移しています。2011年4~5月に,宮崎県の高等学校の寮で集団感染が発生し,1例の死亡を含む5例の感染者が報告されました。

このような集団発生は,マスギャザリング(mass gathering)の際にも生じ,2021年の東京オリンピック・パラリンピックで医療活動に従事する医療従事者に対しては,主催者により,髄膜炎菌ワクチンの接種が行われました。

2023年2月10日、4価髄膜炎菌ワクチン(商品名メンクアッドフィ筋注)が発売された。「髄膜炎菌(血清群A、C、WおよびY)による侵襲性髄膜炎菌感染症の予防」に使用されるワクチンです。

 グラム陰性の双球菌の髄膜炎菌は、保菌者の呼吸器飛沫や分泌を介してヒトからヒトに感染し、鼻咽頭粘膜に生息する。髄膜炎や敗血症など髄膜炎菌によって引き起こされる侵襲性髄膜炎菌感染症IMD)は、髄膜炎菌が髄液、血液などの無菌部位から検出される感染症で、潜伏期は2~10日(平均4日)であり、突発的に発症します。IMDの敗血症例では、広範囲の臨床徴候を呈し、発熱、悪寒、虚脱などが認められ、重症化すると紫斑の出現、ショックおよび播種性血管内凝固症候群(DIC)またはWaterhouse-Friderichsen症候群に進展することがあります。髄膜炎菌性疾患全体の死亡率は7~19%、さらに髄膜炎菌性菌血症の死亡率は18~53%と報告されています。髄膜炎菌の抗原は莢膜で、莢膜多糖体(PS)の種類によって少なくとも12種類の血清群に分類されており、その中でも血清群A、B、C、WおよびYが主要な侵襲性髄膜炎菌感染症IMD)の原因とされています。

今まで使用されていたメナクトラは,廃止され,メンクアドフィに置き換えられます。

下記のサイトで,髄膜炎菌の特性,恐ろしさを理解しましょう。

 良く分かる髄膜炎菌