SGLT-2阻害薬は,糖尿病,慢性腎臓病,慢性心不全の患者さんに処方されます。
さくらクリニックでは,SGLT-2阻害薬として,ジャディアンス(10mg,25mg錠)およびフォシーガ(5mg, 10mg)を採用し,院内処方しています。
大変素晴らしい薬ですが,他のクスリと同様,副作用がないわけではありません。
以下は,その副作用防止法について解説しています。
【1】脱水状態にならないように注意しましょう。
SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)は,血中のブドウ糖を尿の中に排泄してしまうことにより,血糖値を下げます。
ところが,蜂蜜の様な尿を排出することは出来ません。そこで,排泄されるブドウ糖は,体内の水分を引きつれて尿の中に排泄されます。その結果,体内の水分が減少し,脱水状態が生じます。従って,SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)を内服している方は,絶えず,水分を補給しておくことが重要です。
脱水状態が高度になりますと,血液の粘稠度が上昇し,脳梗塞などの原因となることがありますので,くれぐれも,十分な水分補給を御願いします。
【2】食事の際には,適量の炭水化物を食べる様にして下さい。すなわち,ご飯ちゃわん一杯の白米,1~2切れのパンなどを食すようにして下さい。
SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)を内服している方が,炭水化物は食べないなどは,もっての他です。
勿論糖尿病の患者さんは,糖質の摂取制限が必要なのですが,SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)を内服している患者さんは,必要最小限の炭水化物を摂取することが必要です。勿論食べすぎはダメです。
血液中のブドウ糖濃度が低下すると,人間の身体は,お腹の皮下に蓄えられた脂肪をエネルギー源として使用することになります。脂肪は,グリセリン1分子と,脂肪酸3分子が結合した状態で,お腹の皮下に貯蔵されていますが,ブドウ糖濃度が極端に低下すると,脂肪に含まれる脂肪酸が血中に入り込むことになります。すると,血液は脂肪酸により,酸性に傾きます。これをケトーシス,ないしはケトアシドーシスと呼び,大変重篤な状態を引き起こすことがあります。大病院の集中治療室に入院しなくてはならない事態となる可能性があります。(この部分に関しては,一般の方に,話を分かりやすくするため,大まかな説明になっています。)
糖尿病の患者さんには,いつも,ご飯やパンの量を減らしてくださいと御願いしているのですが,SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)を内服している患者さんは,最低限の炭水化物(ご飯や,パン)を食していただくよう,御願いします。勿論食べすぎは禁物です。
【3】シックデイ(発熱,下痢,嘔吐,食欲不振・・・・)などの時には,SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)は中止です。
その際には,一時的に血糖値が上昇することがありますが,服薬を続けるますと,上記の【2】で説明したケトーシス,ケトアシドーシス等が生ずる可能性があります。SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)の服薬は,直ちに中止です。
●シック・デイに関しては,別途説明いたします。
【4】外科手術や,カテーテル検査・治療,前立腺・乳腺などの生検などを受ける時には,多くの場合,服薬は一時中止です。
担当医に,SGLT-2阻害薬(ジャディアンス,フォシーガ)を内服中であることを,必ず告げることを忘れないようにして下さい。このような場合,糖尿病専門の医師にも相談して頂くよう,御願いしてください。
【5】尿路感染や腟炎を生ずることがありますので,その際には,泌尿器科および産婦人科を受診してください。
軽い膀胱炎の場合には,さくらクリニックで処方を致しますので,ご相談ください。
【6】男性・女性性器の周囲に膿瘍が形成されることがあります。蜂窩織炎や,壊死性筋膜炎の可能性が考えられます。両者は,外見上似ていますが,明確な鑑別は専門家に委ねられます。蜂窩織炎の場合には,抗生剤使用および切開排膿で対応できますが,壊死性筋膜炎の場合には,入院・手術が必要となり,専門家の関与が必須です。
糖尿病のガイドラインには,一時「Fournier壊疽」という言葉が用いられていました。「Fournier壊疽」は男性・女性性器周囲に生じた壊死性筋膜炎です。医学部学生時代に使用した昔の医学書に記載されていた,懐かしい医学用語ですが,今は使用されない傾向にあります。今では,一般的は,壊死性筋膜炎と呼ばれることが多いようです。確かに,「壊死性筋膜炎」は,性器周囲・肛門部に生ずる事が多いのですが,その他の部位の身体全体に生じます。SGLT-2阻害薬を使用している,いないに関わらず,糖尿病患者には,壊死性筋膜炎が生じやすい傾向にあります。
壊死性筋膜炎は,単なる筋膜炎とは異なります。治療は,専門病院で,専門医による数ヶ月の集中的な外科治療を要することが一般です。蜂窩織炎とは異なります。