【4】 子宮頸癌ワクチンの「接種勧奨再開(2022年)」までの歴史

子宮頸癌ワクチンの「接種勧奨再開(2022年)」までの歴史と,ワクチンの安全性について

私が医学部の学生の頃,医学部の病理学の講義では,子宮頚がんの原因は,衛生状態が不良なこと,喫煙・・・等であると教わりました。低開発国や,低所得者に子宮頚がんが多いのはこのためだとの説明でした。しかし,HPV の話は,皆無でした。この講義は,昨日の出来事のように,今でもはっきり覚えています。そして,当時の医学書を見てみると,教授の講義の内容と同様な記載となっており,当時は講義内容と同様の知識が正しいと信じられていました。

注:HPV (Human Papilloma Virus)  人のパピローマウイルス

ところが,その病理学の講義から,時間が流れた1983年,ドイツの zur Hausen博士が,子宮頚がんから「HPV16/18型」を分離することに成功しました。この時点から,子宮頸癌ワクチン作成の努力が始まりました。

zur Hausen博士は,2008年,子宮頚がんの原因を究明したことに対して,ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

さらに,1991年,Frazer博士が,ウイルス様粒子(VLP: Virus Like Particle)の作成に成功し,HPVワクチンの作成が急速に進みました。そして海外では,2007年に,HPVワクチンの定期接種化が始まりました。

日本に於いても,2009年に,HPVワクチンが国内承認され,2013年からHPVワクチンの定期接種化が始まりました。しかしながら,2013年に,ワクチン接種後の健康被害が大々的にマスコミにより報じられ,それに伴い,厚生労働省から「接種勧奨差し控え」の通達がなされました。

なんと,2013年~2021年までの9年間,多くの女性が,大変悲しいことですが,HPVワクチンの接種を避ける結果となりました。

HPVワクチンは,世界中の国で接種されているが,「接種勧奨差し控え」などが出され,9年間もの間,HPVワクチンの接種を,殆どの人が受けなかったのは,唯一,日本だけです。(勿論,その9年間に於いても,ワクチンを受けようとすれば,受ける権利はありましたが,社会の風潮がこれを拒んでしまいました。ただ,「接種勧奨差し控え」が出される以前に,多くの女性が接種を受けたことは,不幸中の幸いでした。)

Merck社(日本ではMSD社と呼ばれる)は,2007年に,HPVワクチンの国際共同臨床試験を開始し,7年間の月日をかけて「ワクチンの有効性と安全性」を証明しています。そして,米国をはじめ,世界各国が,HPVワクチンの安全性を認め,承認しています。

WHOの安全性諮問委員会の見解

WHOの安全性諮問委員会(Global Advisory Committee on Vaccination safety: GACVS) は,日本では「接種勧奨差し控え」の真っ最中の2017年に専門家会議を開催し,「あらゆる有害事象,新たな疾患の発症および死亡に関して,ワクチン接種者と非接種者の間に,統計学的に,有意差がない」ことを確認しています。(下記のサイト参照)

また,このサイトの中の文章の一部で,日本を厳しく非難しています。

Where HPV vaccination programmes have been implemented effectively, the benefits are already very apparent. Several countries that have introduced HPV vaccines to their immunization programme have reported a 50% decrease in the incidence rate of uterine cervix precancerous lesions among younger women. In contrast, the mortality rate from cervical cancer in Japan, where HPV vaccination is not proactively recommended, increased by 3.4% from 1995 to 2005 and is expected to increase by 5.9% from 2005 to 2015. This acceleration in disease burden is particularly evident among women aged 15–44 years.28 Ten years after introduction, global HPV vaccine uptake remains slow, and the countries that are most at risk for cervical cancer are those least likely to have introduced the vaccine. Since licensure of HPV vaccines, GACVS has found no new adverse events of concern based on many very large, high quality studies. The new data presented at this meeting have strengthened this position.

上記英文の大まかな内容:

WHOが推進しているHPVワクチンの接種計画は,極めて高率が良く,ワクチンのもたらす恩恵は計り知れない。ワクチンを積極的に導入した国々は,若い女性において,子宮頚癌の前癌病変が,50%減少していることを認めています。

それに反して,日本(Japan)に於いては「接種勧奨差し控え」のため,子宮頚がんによる死亡率が1995~2005年の間に,5.9%増加しています。この日本における死亡率の増加は,15~44歳の女性に於いて極めて顕著です。(訳者の注釈:子宮頚がんは若い女性に多く,そのため,9年間の「接種勧奨差し控え」により,多くの若い女性が子宮癌で死んでいったと述べています。)

ワクチンが導入されてから約10年になりますが,世界的に見ると,ワクチン接種の普及は緩徐であり,子宮頚がんによる死亡リスクの高い国は,ワクチンの導入に消極的な国に限られています。ワクチンの認可以後,WHOの安全性諮問委員会は,極めて巨大な母集団で,そして科学的に極めて質の高い調査・研究を行ってきましたが,問題となるような有害事象(副作用)が生じた症例を,1例たりとも,認めていません。

《Centers for Disease Control and Prevention》

米国疾病予防管理センター。 疾病対策センター。

新型コロナウイルスで有名となった,米国のCDCでは,2021年までに1億3,500万回接種したデーターを基に,その安全性と有効性について下記サイトにおいて記載している。

HPV Vaccine Safety and Effectiveness Data by CDC

HPVワクチンは,世界中の国で接種されているが,「接種勧奨差し控え」などが出され,9年間もの間,HPVワクチンの接種を,殆どの人が受けなかったのは,唯一,日本だけです。

それでは,何故このような事態になってしまったのでしょう??

この問題を迷宮入りに陥れている原因は,薬事協議会,HPVワクチン薬害訴訟全国原告団が入っており,因果関係の明白なサリドマイドやスモンと同位置にあることです。

因果関係も明確でないのに,何故このようなこと至ったのかは,一切不明です。

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